言語の起源と「差別意識」

 人間の「差別意識」をどうか考えるかはいまだ明確な論理が展開されたとは言えない。つまり人びとを十分に納得させるだけの理論的な解明がないということだ。筆者は考える。 「差別意識」の問題は、人類の言語の誕生とその後の経緯とが深く結びついていること、人びとが平等であった原始共産制の社会から私有財産を持つ者が誕生した階級社会への移行こそ「差別意識」を生み出した元凶であること。
 差別には階級差別を基本にして、さまざまな差別が歴史的社会的に形成されてきたこと、前者は人類史の上では短いが現代の視点からみると一定の時間を要して死滅していく性格の問題であること。後者はそれぞれの社会的歴史的状況の変化の中で人びとのイデオロギー闘争を通じて克服されていく性格の問題であること。したがって「差別意識」はそんなに簡単に死滅しない性格の問題であるといえる。
 ただ個別的な差別と「差別意識」は、歴史的社会的条件の変化と人びとの差別克服の努力の中で解消していく性格の問題であること。
 この「差別意識」の問題を読み解くキーワードは、人類の歴史が「旧い社会」と「新しい社会」の衝突の中で、後者が前者を打ち破るためのイデオロギー闘争を繰り広げてきたことである。この社会進歩を図るには人びとの血の滲むたたかいとともに、旧い意識や差別意識を乗り越える新しい変革の意識を導き出すイデオロギーのたたかいがあるということだ。